サラリーマンの所得税(還付申告の場合)
サラリーマンの場合には、通常会社での年末調整で税金(所得税)の計算納付は終了しています。還付申告を行うということは、通常会社で計算した内容に所得控除を追加するか、税額控除を追加するかのどちらかであることがほとんどです。追加する所得控除の代表的なものとして医療費控除があります。また、追加する税額控除として代表的なものとして住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)があります。以下では、その計算の事例をいくつか説明しています。
設定1では、年収500万円、妻、子ども3人の家族での所得税額(源泉徴収税額)、
設定2では、年収1,000万円で家族構成は設定1と同じ場合の所得税額(源泉徴収税額)を計算して源泉徴収票の記載金額を説明しています。
設定1及び設定2をもとにそれぞれサラリーマンの還付申告で多い医療費控除と住宅ローン控除の効果をみてみましょう。ここでは仮に医療費が年間20万円かかった場合(
設定1−医療費控除、
設定2−医療費控除)、住宅ローン控除が以下の設定の場合(
設定1−住宅ローン控除、
設定2−住宅ローン控除)をみてみましょう。まとめたものは最後に記載してあります。
【住宅ローン控除計算例】
・マンション価格 3,000万円(建物部分のみ消費税有)
・借入金の年末残高 2,500万円
・住宅ローン控除額 25万円(2,500万円×1%)
【設定1】
1.年収 500万円
2.社会保険料の年額 70万円(毎月給与から天引きされている健康保険、厚生年金、雇用保険の合計)
3.家族構成
本人 昭和40年5月6日生まれ
妻(パート)年収100万円 昭和42年6月3日生まれ
長男 平成2年5月5日生まれ(大学生)
長女 平成8年10月10日生まれ(高校生)
次女 平成13年8月8日生まれ(小学生)
平成23年分 給与所得者の源泉徴収票(上部)
種 別 |
支払金額 |
給与所得控除後の金額 |
所得控除の合計額 |
源泉徴収税額 |
給料 |
5,000,000 |
3,460,000 |
2,520,000 |
47,000 |
(単位:円)
「支払金額」
⇒ 年収500万円(通常は交通費を含まない金額)
「給与所得控除後の金額」
⇒ 「平成23年分所得税の確定申告の手引」の「給与所得」「計算欄」に基づき計算
「3,600,000円〜6,599,999円」に該当
5,000,000円÷4=1,250,000円(千円未満端数切り捨て)
1,250,000円×3.2−540,000円=346万円(「給与所得控除≒必要経費」を引いた残額)
「所得控除の合計額」
⇒ 社会保険料 70万円
生命保険料控除 5万円
本人 ⇒ 基礎控除 38万円
配偶者 ⇒ 配偶者控除 38万円
長男 ⇒ 特定扶養控除 63万円
長女 ⇒ 一般の扶養控除 38万円
次女 ⇒ 扶養控除はなし
⇒ 所得控除の合計額 252万円
「源泉徴収税額」
「給与所得控除後の金額」−「所得控除の金額」=346万円−252万円=94万円(課税される所得金額)
⇒ 94万円×0.05=47,000円(
課税される所得金額に対する税額の計算表より)
【設定2】
1.年収 1000万円
2.社会保険料の年額 112万円(毎月給与から天引きされている健康保険、厚生年金、雇用保険の合計)
3.家族構成
設定1と同様
平成23年分 給与所得者の源泉徴収票(上部)
種 別 |
支払金額 |
給与所得控除後の金額 |
所得控除の合計額 |
源泉徴収税額 |
給料 |
10,000,000 |
7,800,000 |
2,940,000 |
544,500 |
(単位:円)
「支払金額」
⇒ 年収1,200万円(通常は交通費を含まない金額)
「給与所得控除後の金額」
⇒ 「平成23年分所得税の確定申告の手引」の「給与所得」「計算欄」に基づき計算
「10,000,000円〜」に該当
10,000,000円×0.95−1,700,000円=7,800,000円(「給与所得控除≒必要経費」を引いた残額)
「所得控除の合計額」
⇒ 社会保険料 112万円
生命保険料控除 5万円
本人 ⇒ 基礎控除 38万円
配偶者 ⇒ 配偶者控除 38万円
長男 ⇒ 特定扶養控除 63万円
長女 ⇒ 一般の扶養控除 38万円
次女 ⇒ 扶養控除はなし
⇒ 所得控除の合計額 294万円
「源泉徴収税額」
「給与所得控除後の金額」−「所得控除の金額」=780万円−294万円=486万円(課税される所得金額)
⇒ 486万円×0.2−427,500円=544,500円(
課税される所得金額に対する税額の計算表より)
【設定1−医療費控除】
「支払金額」
⇒ 年収500万円(
設定1と同じ)
「給与所得控除後の金額」
⇒ 346万円(
設定1と同じ)
「所得控除の合計額」
⇒
設定1の所得控除の合計額 252万円
医療費控除の額=20万円−10万円=10万円
医療費控除を足した所得控除の合計額=252万円+10万円=262万円
「源泉徴収税額」
⇒ 47,000円(
設定1と同じ)
「医療費控除を考慮した納めるべき税額」
「給与所得控除後の金額」−「所得控除の金額」=346万円−262万円=84万円(課税される所得金額)
⇒ 84万円×0.05=42,000円(
課税される所得金額に対する税額の計算表より)
「還付税額」
⇒ 47,000円−42,000円=5,000円(申告により還付される税額)
【設定2−医療費控除】
「支払金額」
⇒ 年収1,000万円(
設定2と同じ)
「給与所得控除後の金額」
⇒ 780万円(
設定2と同じ)
「所得控除の合計額」
⇒
設定2の所得控除の合計額 294万円
医療費控除の額=20万円−10万円=10万円
医療費控除を足した所得控除の合計額=294万円+10万円=304万円
「源泉徴収税額」
⇒ 628,500円(
設定2と同じ)
「医療費控除を考慮した納めるべき税額」
「給与所得控除後の金額」−「所得控除の金額」=780万円−304万円=476万円(課税される所得金額)
⇒ 476万円×0.2ー427,500円=524,500円(
課税される所得金額に対する税額の計算表より)
「還付税額」
⇒ 544,500円−524,500円=20,000円(申告により還付される税額)
【設定1−住宅ローン控除】
「支払金額」
⇒ 年収500万円(
設定1と同じ)
「給与所得控除後の金額」
⇒ 346万円(
設定1と同じ)
「所得控除の合計額」
⇒ 252万円(
設定1と同じ)
「源泉徴収税額」
⇒ 47,000円(
設定1と同じ)
「住宅ローン控除を考慮した納めるべき税額」
⇒「源泉徴収税額」−住宅ローン控除額(25万円)= 47,000円−47,000円(※)=0円
※源泉徴収税額=納めた税金の範囲でしか住宅ローン控除は受けられません。つまり、支払った税金以上のものは戻ってきません。
「還付税額」
⇒ 47,000円−0円=47,000円(申告により還付される税額)
【設定2−住宅ローン控除】
「支払金額」
⇒ 年収1,000万円(
設定2と同じ)
「給与所得控除後の金額」
⇒ 780万円(
設定2と同じ)
「所得控除の合計額」
⇒ 294万円(
設定2と同じ)
「源泉徴収税額」
⇒ 544,500円(
設定2と同じ)
「住宅ローン控除を考慮した納めるべき税額」
「源泉徴収税額」−住宅ローン控除額(25万円)=544,500円−250,000円=294,500円
「還付税額」
⇒ 544,500円−294,500円=250,000円(申告により還付される税額)
平成23年分の確定申告をした場合に還付される所得税額等
|
所得税
(還付税額) |
住民税額 (※)
(減少税額) |
医療費控除 |
住宅ローン控除 |
医療費控除 |
住宅ローン控除 |
設定1 (年収500万円の場合) |
5,000円 |
47,000円 |
10,000円 |
47,000円 |
設定2(年収1,000万円の場合) |
20,000円 |
250,000円 |
10,000円 |
0円 |
差額 |
15,000円 |
203,000円 |
0円 |
-47,000円 |
※医療費控除は住民税の計算でも所得控除であるため、翌年分の住民税(平成24年6月から給与より控除される)が減少します。
※所得税の住宅ローン控除を受けている方で所得税から控除できなかった額がある場合には、翌年度の住民税(平成24年6月より給与から控除される)から控除されます。控除額は@所得税に係る住宅借入金等特別控除額から前年分の所得税額を控除した額とA前年分(平成23年分)の所得税の課税所得金額等の5%のいずれか低い金額となります(9.75万円が限度)。
《設定1の場合》
@ 250,000円−47,000円=203,000円
A 940,000円×5%=47,000円
⇒ いずれか低い方 47,000円
課税される所得金額に対する税額の計算表(所得税)
課税される所得金額 |
課税される所得金額に対する税額 |
0円 |
0円 |
1,000円〜1,949,000円 |
@×0.05 |
1,950,000円〜3,299,000円 |
@×0.1ー97,500円 |
3,300,000円〜6,949,000円 |
@×0.2−427,500円 |
6,950,000円〜8,999,000円 |
@×0.23−636,000円 |
9,000,000円〜17,999,000円 |
@×0.33−1,536,000円 |
18,000,000円〜 |
@×0.4−2,796,000円 |
※住民税の税率は10%となります。